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ナーシングホームやホスピス型住宅を辞める理由は、すべてがナーシングホーム特有の問題とは限りません。
人間関係、給与、通勤、キャリア変更など、一般企業でも起こる理由があります。一方で、看護師としての判断責任、介護業務による腰痛、施設内訪問看護の運用、看取り中心の看護など、この業界特有の理由もあります。
転職によって改善できる問題は少なくありません。
ただし、退職理由の層を見誤ると、転職先でも同じ問題にぶつかり、短期間で退職を繰り返す可能性があります。
この記事では、ナーシングホームの看護師が辞める理由を、次の5層に分けて整理します。
| 層 | 退職理由の種類 | 転職で改善しやすいか |
|---|---|---|
| 第1層 | 社会人として、どの職場でも起こり得る理由 | 改善しやすい |
| 第2層 | 看護師という職種に共通する理由 | 職場選びで軽減できる |
| 第3層 | 介護施設で働く人に共通する理由 | 施設選びで差が出る |
| 第4層 | ナーシングホーム特有の理由 | 業態変更が必要な場合がある |
| 第5層 | 運営法人や施設ごとの違いによる理由 | 法人・施設単位の比較が必要 |
結論から言うと、人間関係、管理者、通勤時間、給与説明の不一致などが原因であれば、転職で改善する可能性があります。
一方、看取りそのものがつらい、身体介助が難しい、施設内訪問看護の仕組みが合わない場合は、別のナーシングホームへ移っても同じ問題を繰り返す可能性があります。
看護師は転職先を探しやすいが、希望条件まで満たすとは限らない
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、看護師の令和6年度の有効求人倍率は全国で2.41倍です。
また、厚生労働省の一般職業紹介状況では、令和6年度平均の全職業の有効求人倍率は1.25倍です。
つまり、ハローワーク上の統計では、看護師は全職業平均より求人が多い職種といえます。
| 項目 | 有効求人倍率 |
|---|---|
| 看護師 | 2.41倍 |
| 全職業平均 | 1.25倍 |
ただし、有効求人倍率2.41倍は、看護師一人ひとりに希望どおりの求人が2.41件あるという意味ではありません。
地域、年齢、経験、雇用形態、夜勤可否、通勤時間、給与条件によって、応募できる求人は大きく変わります。
高給与、日勤のみ、土日休み、通勤30分以内、医療依存度低め、残業少なめといった条件を増やすほど、候補は少なくなります。
求人が多いことは、急いで転職先を決める理由ではありません。
むしろ、複数の職場を比較する余裕として使うべきです。
看護師は求人を見つけやすい職種ですが、給与・夜勤人数・医療依存度・通勤時間まで満たす求人は限られます。
1社だけで決めず、公式求人、掲載型求人サイト、紹介会社など複数の経路から条件を確認してください。
看護師向けはこちら
介護士向けはこちら
退職理由は5層で整理すると判断しやすい
ナーシングホームを辞めたいと感じたとき、退職理由を「人間関係が悪い」「忙しい」「給与が違う」と一言でまとめると、次の職場選びを間違えやすくなります。
重要なのは、その理由がどの層にあるかです。
退職理由の5層
第1層 社会人全般
人間関係・給与・通勤・キャリア変更
第2層 看護師全般
判断責任・急変対応・記録・資格責任・メンタル負担
第3層 介護施設全般
介護業務・腰痛・職種間連携・家族対応
第4層 ナーシングホーム特有
看取り・高医療依存度・施設内訪問看護・寄り添えないギャップ
第5層 法人・施設ごとの差
医療法人・社会福祉法人・営利企業・管理者・拡大スピード・評価指標
同じ「忙しい」でも、原因は複数あります。
| 表面的な退職理由 | 実際に確認すべき原因 |
|---|---|
| 忙しい | 入居者数が多いのか、医療依存度が高いのか、記録が多いのか |
| 人間関係が悪い | 個人の相性か、管理者の問題か、人員不足による対立か |
| 給与が違う | 求人票の誤解か、契約違反か、夜勤回数の違いか |
| 寄り添えない | 施設の問題か、施設内訪問看護の仕組み自体が合わないのか |
| 体調を崩した | 夜勤負担か、介護業務か、メンタル不調か |
ここを分けないまま転職すると、同じ退職理由を繰り返す可能性があります。
第1層.社会人として、どの職場でも起こり得る退職理由
人間関係や職場風土が合わなかった
上司と方針が合わない、相談しても対応されない、特定の職員だけが優遇される、陰口や無視があるといった問題は、ナーシングホームに限らず起こります。
この層の問題は、勤務先を変えることで改善する可能性があります。
ただし、「人間関係が悪かった」だけで終わらせると、次の職場選びで同じ失敗をしやすくなります。
確認すべきなのは、次の違いです。
| 分けて考える点 | 転職で改善する可能性 |
|---|---|
| 特定の職員との相性が悪かった | 別施設で改善する可能性がある |
| 施設長や看護管理者のマネジメントが悪かった | 管理者が違えば改善する可能性がある |
| 人員不足で職員同士が対立していた | 人員配置を確認しないと再発する |
| 法人全体の風土が合わなかった | 別法人への転職が必要な可能性がある |
看護師を対象とした研究でも、組織風土は職場ストレッサーやバーンアウトを介して離職意向に関係すると報告されています。
また、これまで複数の施設口コミを確認してきた中でも、法人名よりも「施設長」「看護管理者」「現場責任者」によって職場の雰囲気が変わるという傾向は繰り返し見られます。
同じ法人でも、施設長が変わるだけで、相談のしやすさ、休みの取りやすさ、看護師と介護士の関係が変わることがあります。
法人名だけで職場風土を判断しないことが重要です。
給与が当初の想定と違った
求人票の月給や想定年収と、実際の支給額に差があることも退職理由になります。
ただし、求人票の金額と実際の振込額が違うだけで、直ちに虚偽求人とはいえません。
ナーシングホームの求人では、次のような手当を含んだモデル給与が掲載されることがあります。
| 求人票に含まれやすい項目 | 注意点 |
|---|---|
| 基本給 | 実際の給与の土台。賞与や退職金に影響しやすい |
| 夜勤手当 | 夜勤回数が少ないと月給が下がる |
| 固定残業代 | 基本給と分けて確認する必要がある |
| 資格手当 | 支給条件を確認する |
| 処遇改善関連手当 | 制度や法人方針で変動する可能性がある |
| 賞与見込み | 初年度は満額支給されない場合がある |
例えば、月給40万円と記載されていても、夜勤5回分を含むモデル給与であれば、夜勤に入れない期間は支給額が下がります。
想定年収も、賞与が満額支給された場合の金額であり、初年度は算定期間が短いことがあります。
給与を理由に転職する場合は、基本給、夜勤手当、固定残業代、賞与実績、退職金、試用期間中の条件を必ず確認してください。
「医療法人なら給与がよい」「株式会社なら高給与」と一律には判断できません。
医療法人や社会福祉法人では、給与表、定期昇給、退職金が整備されている場合があります。一方で、営利企業でも、夜勤手当や役職手当によって高い年収を提示する施設があります。
給与の安定性を重視するなら、医療法人や社会福祉法人も比較対象になります。
現在の年収を優先するなら、夜勤手当や役職手当を含む営利企業も比較対象になります。
重要なのは法人種別ではなく、給与の中身です。
| 給与で確認すべき項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 基本給 | 低すぎないか |
| 夜勤手当 | 1回単価と想定回数 |
| 固定残業代 | 何時間分か、超過分支給があるか |
| 賞与 | 前年度実績と初年度支給条件 |
| 退職金 | 有無、勤続何年以上か |
| 昇給 | 定期昇給か評価昇給か |
| 試用期間 | 月給や手当が変わるか |
労働条件通知書と実際の給与が異なる場合は、求人票、労働条件通知書、雇用契約書、給与明細、採用担当者とのメールを残し、会社へ書面で確認します。
通勤時間が想像以上に負担だった
入職前には通えると思っていても、早番、遅番、夜勤、残業が始まると、通勤時間が大きな負担になることがあります。
片道60分なら往復2時間です。週5日勤務では、通勤だけで週10時間を使います。
さらに、夜勤明けの長距離運転、満員電車、乗り換え、駅から施設までの徒歩、駐車場からの移動も負担になります。
国土交通省の大都市交通センサスでは、三大都市圏における定期券利用者の平均通勤時間は、首都圏67.7分、中京圏61.1分、近畿圏62.2分とされています。
ただし、これは定期券利用者を対象とした交通調査であり、車通勤を含む看護師全体の平均ではありません。
看護師の場合は、夜勤明けに車で帰る、早番で公共交通機関の本数が少ない、遅番後に帰宅が遅くなるなど、一般的な日勤会社員とは違う負担があります。
通勤が理由なら、看護師やナーシングホームを辞める必要はありません。
自宅に近い施設、車通勤できる職場、夜勤回数の少ない職場へ変えることで改善する可能性があります。
別の仕事に挑戦したくなった
ナーシングホームに大きな不満がなくても、別の仕事を経験したいという理由で退職する人もいます。
病院、訪問看護、クリニック、企業看護師、看護教育、福祉用具、医療系営業、介護施設の管理職など、看護師経験を活かせる仕事はナーシングホーム以外にもあります。
これは後ろ向きな退職ではありません。
ただし、夜勤のない仕事へ移ると、夜勤手当がなくなり年収が下がる可能性があります。
仕事内容だけでなく、基本給、手当、休日、通勤時間まで比較する必要があります。
第2層.看護師という職種に共通する退職理由
判断責任や急変対応への負担が大きかった
看護師としての状態判断、急変対応、医師への報告、事故への不安は、勤務先を変えても完全にはなくなりません。
ナーシングホームでは、医師が常駐していない施設も多く、夜間や休日に看護師が状態を判断し、主治医や訪問診療へ報告する場面があります。
この負担が理由なら、「別のナーシングホームへ移る」だけでは解決しない可能性があります。
一方で、次のような体制がある職場であれば、負担を軽減できる可能性があります。
| 確認項目 | 負担軽減につながる理由 |
|---|---|
| 夜間の医師連絡体制 | 一人で判断を抱えにくい |
| 看護管理者への相談体制 | 判断の振り返りができる |
| 急変時マニュアル | 判断基準が明確になる |
| 入職後の教育期間 | 未経験領域の不安を減らせる |
| 夜勤開始までの期間 | 慣れる前の単独夜勤を避けやすい |
看護師という仕事自体が合わないのか、一人で判断させられる体制が合わないのかを分ける必要があります。
コンプライアンス上の問題があった
コンプライアンス上の不安は、退職理由として表に出にくい問題です。
例えば、次のようなケースです。
| 問題の例 | リスク |
|---|---|
| 実際とは異なる時刻で訪問記録を作成する | 請求・記録上の問題になる可能性 |
| 実施していないケアへ署名する | 看護師個人の責任が問われる可能性 |
| 事故記録を事実と異なる内容へ修正する | 事故対応・説明責任に影響する |
| 管理者が報告せず、現場判断にされる | 権限のない職員へ責任が寄る可能性 |
上司からの指示であっても、事実と異なる記録を作成した責任が完全になくなるとは限りません。
不適切だと感じる指示を受けた場合は、日時、指示者、指示内容、自分の回答を事実ベースで整理します。
ただし、利用者の個人情報や法人資料を私物端末へ転送する行為には、別の法的・懲戒リスクがあります。
公益通報者保護法による保護にも要件があります。
深刻なケースでは、無断で資料を持ち出す前に、内部通報窓口、行政窓口、弁護士などへ相談する方が安全です。
コンプライアンス問題は、看護師の適性ではなく、勤務先の管理体制の問題です。
この場合は、法人や施設を変えることが有効な可能性があります。
メンタルヘルスを崩した
看取り、急変、事故、家族対応などが続くと、精神的な負担が蓄積します。
そこへ人間関係、管理者からの圧力、睡眠不足、休憩不足が重なると、不眠、動悸、食欲低下、出勤前に涙が出るといった症状が出ることがあります。
この状態で転職活動だけを急ぐのは危険です。
勤務先を変えれば改善する場合もありますが、十分に回復しないまま次の職場へ移ると、環境変化そのものが新たな負担になる可能性があります。
心身の症状が出ている場合は、転職先探しよりも、医療機関、産業医、家族、相談窓口への相談と休養を優先してください。
第3層.介護施設で働く人に共通する退職理由
看護師と介護士の役割が曖昧だった
介護施設では、看護師と介護士が同じ入居者の生活を支えます。
一方で、排泄介助、食事介助、コール対応、清掃、配膳などを誰が担当するかは施設によって異なります。
看護師は医療処置や記録を優先し、介護士は看護師にも生活援助へ入ってほしいと考えることがあります。
どちらかが一方的に間違っているとは限りません。
問題は、施設側が役割を明確にしていないことです。
「お互いに協力してください」だけで運営すると、忙しくなるほど職種間の対立が起こりやすくなります。
| 起こりやすい対立 | 背景 |
|---|---|
| 看護師が介護に入らないと言われる | 医療処置・記録との優先順位が不明確 |
| 介護士に処置周辺業務を頼みにくい | 業務範囲が整理されていない |
| コール対応で揉める | 住宅業務と訪問看護業務が混在 |
| 食事・排泄・清掃で不満が出る | 誰がどこまで行うか決まっていない |
この問題は、介護施設すべてに必ずあるわけではありません。
業務分担と指示系統が整理された施設へ移ることで改善する可能性があります。
忙しさによって体調が悪化した
介護施設の忙しさは、職員数だけでは判断できません。
同じ看護師3人でも、入居者20人と50人では負担が異なります。
人工呼吸器、気管切開、頻回吸引、認知症、転倒リスクの高い入居者の人数によっても業務量は変わります。
休憩が取れない、夜勤明けにも記録が残る、休日にも連絡が入る状態が続けば、睡眠不足や体調不良につながります。
忙しさが原因なら、看護師を辞める必要があるとは限りません。
入居者数、実働人数、医療依存度、訪問件数、休憩取得状況を比較し、負担の低い職場へ移る方法があります。

腰痛が悪化した
介護施設では、看護師も移乗、体位変換、排泄介助、食事介助などを担当することがあります。
人員が少ない時間帯に一人で介助する状態が続けば、腰痛が悪化する可能性があります。
厚生労働省は、全介助が必要な人の抱え上げについて、リフトなどを積極的に使用し、原則として人力だけで抱え上げを行わせないことを示しています。
次の職場では、リフトやスライディングボードの有無だけでなく、実際に使用しているか、二人介助を守れる人員がいるかまで確認する必要があります。
| 面接で確認すること | 理由 |
|---|---|
| リフトやスライディングボードの有無 | 腰痛予防の設備確認 |
| 実際に使用しているか | 置いてあるだけでは意味がない |
| 二人介助が守られているか | 夜勤帯の腰痛リスクに直結 |
| 看護師が入浴介助に入るか | 身体負担の大きさが変わる |
| 腰痛時の配置相談が可能か | 継続勤務できるかに関わる |
身体介助そのものを避けたい場合は、健診、外来、クリニック、相談業務など、介助量の少ない職場も比較対象になります。
第4層.ナーシングホーム特有の退職理由
看取り中心の看護が合わなかった
ナーシングホームやホスピス型住宅では、看取りが日常的に行われる施設があります。
入居者との別れが続くこと、家族への説明、医師の死亡確認までの対応、亡くなった直後に別の訪問へ入ることに精神的な負担を感じる人もいます。
看取りそのものがつらい場合は、別のナーシングホームへ移っても同じ問題が起こる可能性があります。
その場合は、ナーシングホームの中で比較するより、健診、外来、デイサービス、回復期、一般病棟など、看取りが中心ではない職場を検討する方が合理的です。
| 退職理由 | 次に比較すべき職場 |
|---|---|
| 看取りが精神的につらい | 健診、外来、デイサービス、回復期 |
| 急変対応が怖い | 医師常駐の病院、教育体制のある施設 |
| 家族対応が重い | 外来、健診、企業看護師 |
| 終末期看護自体は好きだが忙しすぎる | 人員配置に余裕のあるホスピス、緩和ケア病棟 |
看取りが嫌なのか、看取りをする余裕がない施設が嫌なのかを分ける必要があります。
医療依存度と人員配置が合っていなかった
人工呼吸器、気管切開、頻回吸引、経管栄養、麻薬の持続投与、看取り期の入居者が多い施設では、看護師の負担が高くなります。
この場合は、ナーシングホーム自体が合わないとは限りません。
医療依存度の低い施設や、夜勤看護師の多い施設へ移ることで改善する可能性があります。
ただし、「夜勤2名体制」という表現には注意が必要です。
看護師1名と介護士1名なのか、看護師2名なのかで医療対応力は大きく異なります。
| 求人票の表現 | 確認すべきこと |
|---|---|
| 夜勤2名体制 | 看護師何名、介護士何名か |
| 医療依存度高め | 人工呼吸器・気切・頻回吸引の人数 |
| 看取り対応あり | 年間看取り件数、月平均件数 |
| 残業少なめ | 記録は勤務時間内に終わるか |
| 休憩あり | 休憩中のコール対応者は誰か |
夜勤人数だけでなく、入居者数、重症者数、吸引回数、看取り件数、休憩中の対応者まで確認する必要があります。

忙しくて寄り添う看護ができなかった
ナーシングホームは「最期まで寄り添う看護ができる職場」として紹介されることがあります。
しかし、吸引、点滴、経管栄養、麻薬管理、排泄介助、コール対応、訪問記録が重なれば、一人の入居者とゆっくり話す時間は取れません。
看取りの場面でも、ほかの入居者の処置や急変が重なれば、家族に付き添い続けることは困難です。
寄り添えるかどうかは、施設の名称や理念ではなく、入居者数、医療依存度、人員配置、訪問件数、記録量によって変わります。
この問題は、医療依存度や訪問件数の少ない施設へ移ることで改善する場合があります。
一方で、予定訪問や記録に区切られず、より長く一人の利用者へ関わりたい場合は、施設内訪問看護という仕組み自体が希望と合っていない可能性があります。
施設内訪問看護の運用が合わなかった
併設型訪問看護では、同じ建物内にいる看護師でも、訪問看護計画や訪問スケジュールに沿って動きます。
住宅職員としてのコール対応と、訪問看護職員としての予定訪問が重なり、業務が中断されることもあります。
施設内訪問看護で起こりやすいズレ
住宅側
「同じ建物にいるのだから、すぐ対応してほしい」
訪問看護側
「今は別の入居者の訪問中で、記録も必要」
現場
「結局、予定訪問もコール対応も両方くる」
施設内訪問看護の仕組みそのものに違和感がある場合、同じ運営形態の施設へ転職しても問題が再発する可能性があります。
在宅への訪問看護、病院、外来など、業務構造の異なる職場も比較する必要があります。
ナーシングホームを辞めたい理由が、現在の施設にあるのか、看取りや施設内訪問看護という働き方にあるのかで、選ぶ転職先は変わります。
第5層.運営法人と施設ごとの風土による理由
ナーシングホームやホスピス型住宅は、医療法人、社会福祉法人、株式会社など、複数の法人形態で運営されています。
法人種別によって、給与制度、意思決定、拡大スピード、評価指標、現場風土に違いが出ることがあります。
ただし、法人種別だけで職場の良し悪しは決まりません。
医療法人でも医師へ相談しにくい施設はあります。社会福祉法人でも給与や人員配置に余裕がない場合があります。営利企業でも教育やコンプライアンスを重視する法人があります。
法人種別は候補を絞る材料にはなりますが、最終的には施設単位で確認する必要があります。
| 運営法人 | 起こりやすい特徴 | ギャップになりやすい点 |
|---|---|---|
| 医療法人 | 医療連携、給与表、病院的な管理体制 | 意思決定が階層的、施設単独で給与変更しにくい |
| 社会福祉法人 | 公益性、地域密着、退職金や規程整備 | 年功的、変化が遅い場合がある |
| 営利企業 | 高給与、拡大、意思決定の速さ | 稼働率・利益目標と現場負担のギャップ |
| 投資ファンド傘下・急拡大型 | 短期間で拠点拡大しやすい | 管理者育成・採用が追いつかない場合がある |
医療法人が合う可能性がある人
安定した基本給、賞与、退職金、医師との連携、病院に近い管理体制を重視する人は、医療法人も比較対象になります。
ただし、医療法人だから必ず高給与とは限りません。
給与表がある分、急な昇給や施設単独の手当増額が難しい場合もあります。
社会福祉法人が合う可能性がある人
長く働くこと、退職金、福利厚生、地域性、安定した運営を重視する人は、社会福祉法人も比較対象になります。
ただし、年功的な制度や既存規程が強い法人では、中途入職者が期待する給与や役職に届かない可能性があります。
営利企業が合う可能性がある人
高給与、役職、拡大フェーズ、スピード感を重視する人は、営利企業も比較対象になります。
ただし、施設数の拡大、稼働率、売上、利益などの経営指標が現場にも強く影響する場合があります。
開設スピードに採用や教育が追いつかないと、現場負担が増えます。
「高給与」と「高負担」がセットになっていないか確認が必要です。
口コミから共通して見えやすい内容
これまで施設記事を作成する過程で確認した複数法人・複数施設の口コミでは、法人が異なっても、似た内容が繰り返し見られました。
特に共通しているのは、上司や管理者によって職場の雰囲気が変わるという点です。
同じ法人でも、施設長や看護管理者が変わることで、相談のしやすさ、休みの取りやすさ、職種間の関係が変化したという趣旨の投稿があります。
ほかにも、次の内容は複数施設で見られます。
| 口コミで見えやすい傾向 | 読み方 |
|---|---|
| 上司によって雰囲気が変わる | 法人名だけで判断しない |
| 人手不足で職種間の関係が悪化する | 夜勤人数・日勤実働人数を確認する |
| 求人時の説明と配属後の運用が違う | 労働条件通知書と面接記録を確認する |
| 教育内容が施設によって異なる | 入職後研修と夜勤開始時期を確認する |
| 本部と現場の認識に差がある | 稼働率・採用状況・管理者権限を確認する |
| 新規開設直後はルールが定まっていない | 開設時期と管理者経験を確認する |
全国展開する大手法人でも、施設間の差がなくなるわけではありません。
ただし、口コミには注意点があります。
口コミは統一条件で全施設を調査したものではありません。対象施設、投稿時期、媒体、回答者属性が異なるため、発生頻度や法人間の優劣は比較できません。
不満を持つ人ほど投稿しやすい偏りもあります。
個別の口コミだけで事実認定せず、同じ指摘が複数年・複数媒体で繰り返されているか、面接で確認できるかを見る必要があります。
転職で改善しやすい問題・繰り返しやすい問題
退職理由によって、次に選ぶべき職場は変わります。
| 退職理由 | 転職で改善しやすいか | 次に確認すべきこと |
|---|---|---|
| 人間関係 | 改善しやすい | 管理者、退職者数、職種間連携 |
| 通勤時間 | 改善しやすい | 実際の通勤時間、夜勤明けの移動 |
| 給与説明の不一致 | 改善しやすい | 労働条件通知書、基本給、夜勤手当 |
| 管理者の方針 | 改善しやすい | 施設長・看護管理者の在籍期間 |
| 医療依存度が高すぎる | 施設選びで改善可能 | 重症者数、夜勤看護師人数 |
| 腰痛 | 施設選びで差が出る | 福祉用具、二人介助、入浴介助 |
| 看取りがつらい | 同業態では再発しやすい | 看取り中心でない職場を比較 |
| 施設内訪問看護が合わない | 同業態では再発しやすい | 病院、外来、在宅訪問看護も比較 |
| 看護師の判断責任がつらい | 完全には消えにくい | 医師常駐、教育体制、相談体制 |
退職を急いだ方がよい可能性がある状態
次の状態が続いている場合は、比較検討より先に、休職、退職、外部相談を検討する必要があります。
| 状態 | 優先すべき対応 |
|---|---|
| 事実と異なる記録や署名を繰り返し求められる | 内部通報、行政相談、弁護士相談 |
| 契約書と異なる給与が支給され、説明や訂正がない | 書面確認、労働相談 |
| 医師から休養を勧められているのに勤務を強く求められる | 休職・受診継続を優先 |
| 出勤前の動悸、不眠、食欲低下が続く | 医療機関、産業医、相談窓口 |
| 夜勤中の安全を確保できない人員配置が常態化 | 管理者相談、配置変更、退職検討 |
| 事故や不適切運用の責任を一職員へ負わせようとしている | 記録整理、外部相談 |
これらは職場との相性ではなく、健康、生活、看護師資格を守るうえでの問題です。
退職理由の層を見誤ると転職を繰り返す
人間関係や施設長の方針が原因なら、別法人や別施設への転職で改善する可能性があります。
通勤時間が原因なら、同じ仕事内容でも自宅に近い施設へ移れば改善できます。
給与制度が原因なら、医療法人、社会福祉法人、営利企業を横断して、基本給、夜勤手当、賞与、退職金を比較する必要があります。
看取りそのものがつらいなら、別のホスピス型住宅へ移っても再発する可能性があります。
腰痛が原因なら、福祉用具を実際に使用していない介護施設を選べば、同じ問題を繰り返します。
施設内訪問看護の仕組みが合わないなら、運営会社ではなく勤務形態を変える必要があります。
退職理由を「人間関係」「忙しかった」という一言だけで終わらせると、次の職場を選ぶ基準が作れません。
次の職場を選ぶ前に確認すること
面接では、抽象的な質問ではなく、数字や運用を確認します。
| 退職理由 | 面接で確認する質問 |
|---|---|
| 人間関係 | 管理者の在籍期間、直近1年間の退職者数、相談経路 |
| 給与 | 基本給、夜勤回数、固定残業代、賞与実績、退職金 |
| 忙しさ | 入居者数、実働人数、医療依存度、訪問件数、休憩取得状況 |
| 看取り | 年間看取り件数、看取り期の入居者数 |
| 腰痛 | 福祉用具の使用状況、二人介助の運用 |
| 通勤 | 早番、遅番、夜勤明けの所要時間 |
| 法人風土 | 施設長と看護管理者が評価される指標 |
| コンプライアンス | 記録やケア内容に疑問がある場合の相談先 |
特に確認したい質問は、次の通りです。
「現在の入居者数と満床時の人数を教えてください」
「夜勤は看護師と介護士がそれぞれ何人ですか」
「人工呼吸器、気管切開、頻回吸引、看取り期の入居者は何人いますか」
「月給には夜勤何回分が含まれていますか」
「夜勤に入るまでの月給はいくらですか」
「看護師が担当する介護業務と住宅業務を教えてください」
「休憩中のコールや急変は誰が対応しますか」
「記録やケア内容に疑問がある場合、どこへ相談しますか」
「直近1年間に退職した看護師は何人ですか」
回答が「状況によります」「みんなで協力しています」「入職後に説明します」だけで、人数や給与条件を示さない場合は注意が必要です。
転職で改善するには、辞めたい理由と、次の職場で変える条件を一致させる必要があります。
紹介会社だけに任せず、公式求人や自己応募も含めて条件を書面で比較してください。

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ナーシングホームを辞める理由は、人間関係だけではありません。
夜勤人数、医療依存度、看取り件数、コール対応、記録量、給与内訳、紹介会社との付き合い方など、入職前に確認しておけば避けられるズレもあります。
転職後に「また同じ理由で辞めたくなった」とならないために、面接でそのまま使える質問例や、応募前チェックリストをnoteで整理しています。

まとめ|転職先の数より原因分析が重要
看護師の有効求人倍率は全職業平均より高く、転職は現実的な選択肢です。
人間関係、管理者、職場風土、通勤時間、法人の運営方針などが原因なら、勤務先を変えることで改善する可能性があります。
一方、看取り、身体介助、夜勤、看護師としての判断責任、施設内訪問看護の仕組み自体が合わない場合、同じ種類の施設へ転職しても問題を繰り返す可能性があります。
重要なのは、辞めるか我慢するかだけを考えることではありません。
自分の退職理由が、社会人、看護師、介護施設、ナーシングホーム、運営法人のどの層にあるかを確認し、その層を変えられる転職先を選ぶことです。
参考文献・出典
- 厚生労働省「職業情報提供サイト job tag・看護師」
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/156 - 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年3月分及び令和6年度分)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_57261.html - 中央ナースセンター「2024年度 看護職の求職・求人・就職に関する分析報告書」
https://www.nurse-center.net/nccs/scontents/NCCS/html/pdf/2024/202_1.pdf - 厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/index.html - 厚生労働省「労働条件の明示」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/study/roudousya_roudoujouken.html - 厚生労働省「募集条件と実際の労働条件が異なる場合」
https://www.check-roudou.mhlw.go.jp/hanrei/shogu/different.html - 厚生労働省「医療法人について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001p9ka-att/2r9852000001pexa.pdf - 厚生労働省「地域における公益的な取組」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_13289.html - 厚生労働省「有料老人ホームの現状と課題・論点」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001475471.pdf - 厚生労働省「保健衛生業における腰痛の予防」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31197.html - 厚生労働省「こころの耳Q&A」
https://kokoro.mhlw.go.jp/qa/ - 厚生労働省「公益通報者の保護」
https://www.mhlw.go.jp/shinsei_boshu/kouekitsuhousha/index.html - 国土交通省「第12回大都市交通センサス調査結果」
https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo12_hh_000106.html - 塚本尚子ほか「組織風土が看護師のストレッサー、バーンアウト、離職意図に与える影響」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/30/2/30_20070309004/_pdf - 塚本尚子ほか「組織風土としての看護師長のあり方が看護スタッフのバーンアウトに及ぼす影響」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsnr/32/5/32_20090919009/_pdf/-char/ja
